
ついに日本語版が発売となった『サイバーパンクRED』用サプリメント『デンジャー・ギャル・ドシエ』(以下DGD)。“NPCと所属組織の設定資料集”と銘打たれた本書には、ナイトシティを代表する15の組織と、その代表的なメンバーたち120人以上のデータが収録されている。データの充実した、使いでのある一冊だ――だが強いて欠点を挙げれば、具体的な活用法がすぐにはっきりとわかる作りにはなっていない。
そこで本記事では、『デンジャー・ギャル・ドシエ』の活用法について解説する。
付属シナリオをプレイしよう
一番わかりやすい活用法がこれだ。DGDには『インシデント』というシナリオが付いている。このシナリオではデンジャー・ギャル・プーマ・スクワッドの主要メンバーであるマウスが依頼人として登場する。これはDGDのNPCを依頼人として登場させる使い方の好例になる。マウス(DGD P.31)やプーマ・スクワッドの解説を読んで、彼女をロールプレイする参考にしてみよう。プレイし終わったらシナリオに書いてある通り続編を考えてみるのもいい。
デンジャー・ギャル・ドシエ+を読もう
サイバーパンクRED日本語版公式サイトで無料ダウンロードできるDLC『デンジャー・ギャル・ドシエ+』には、DGDの各勢力用のプロットのアイデアがある。砕いて言えば「この勢力はゲームの中でこんなふうにも使えますよ」が書いてある。便利なのでインターネットにアクセスできるGMは必ず読んでおこう(これを読んでるってことはおまえはアクセスできるはずだ)。
『インシデント』の補足データもある。NPCデータの中には、シナリオ中で死体や意識不明の重体患者として出てくるNPCがいるが、彼らのデータと設定は、彼らを知る他のNPCたちをGMが演じる際、会話に深みを持たせるのに役立つだろう。
そしてNPC用のトークン(コマ)も全キャラクターぶん用意されている。これはグリッド・マップを使って戦闘する際にたいそう役に立つ。プリントアウトして厚紙に貼って、あるいはオンライン用のデータとして、私的使用の範囲内で大いに活用しよう。
キャラクターの使い方いろいろ
DGDに収録されているNPCたちにはたくさんの使い道がある。大まかに分けると、
本人として出す:つまりデータと背景情報の両方を使う。
別人として出す:つまりデータだけを使って背景情報は変える。
だ。
本人として出す
本人として出す方法はいろいろある。
コネとして出す:たとえばゲーム中にプレイヤーが「おれの知り合いにカネで情報を流してくれる刑事とかいないの?」とか聞いてきたなら、そんな時こそエスコバル(DGD P.82)とかサージ(DGD P.86)の出番だ。
ライフパス中の人物として出す:おまえのPCのライフパスには、親友や敵、元恋人、相棒や顧客が出てきたりはしないだろうか? DGDを読んで、気に入ったNPCがいたら、GMに許可をとって自分のPCの設定に取り入れてもいいだろう。あらかじめ設定を作っていなくても、即興でゲームに登場させても構わない。例えば、セッション中にプレイヤーが「私のライフパスに“家庭用システムの安全を確保するためにわたしを使う地元のノーマッド”が顧客だって書いてあるんだけど、なんか仕事くれたりしない?」とか聞いてきたなら、その顧客が実はサイトシーアズの面々(DGD P.99~)であったことにしてしまうのだ(そしてそのPCをサイトシーアズとNCPDのトラブルに巻き込んでしまおう!)。
チームメイトとして出す:『サイバーパンクRED』P.390には、サイバーパンクの世界で自然に発生しそうなPCチームの例が示されている。この分類はDGDの組織にそのまま当てはまるものが多い。デンジャー・ギャル・プーマ・スクワッドは“コーポレート・チーム”であり、デジタル・ディーヴァズは“バンド”、トラウマ・チームNC4-2救急隊は“トラウマ・チーム”の、NCPD第1分署は“ローメン”の、ネットワーク54は“メディア・チーム”、サイトシーアズはアルデカルド・ファミリーに属する“ノーマッド・パック”の好例だ。さまざまなギャングの中でも、メイルストロームは典型的なブースターギャングだし、シックス・ストリートやタイガー・クローズは自警団ギャングだ。PCがこうしたチームに(長期的にせよ一時的にせよ)所属することになった場合、DGDのNPCたちは仲間として登場させるのに丁度良い。
ピンチの時の味方として出す:PCが危機に陥ったところで、そのPCに借りのあるNPCが借りを返しに出てくるのも王道の展開のひとつだ(借りがあるのはNPC本人でなく、その仲間や家族でもいい)。DGDがあればそんな時のためのキャラクターもすぐに用意できる。
敵として出す:DGDはNPC集だが、一般的なファンタジーTRPGの“モンスター集”のような使い方もできる。いろいろな強さと戦い方をする“モンスター”のデータがたくさん載ってるんだから、それを敵として使わないのはもったいないよな、チューマ。
戦闘で直接対決する敵として使う場合、GMはNPCの戦闘力をきちんと把握しておくべきだ。敵の人数の調整については、ルールブックP.400の『バトル』の項と、DGDのP.150を参考にすれば間違いないが、そこに書かれていない重要な要素が1つある。それはNPCの【反応】の値だ。【反応】が8以上あるキャラクターは遠隔攻撃や爆発物の回避を試みることができるようになることを忘れないこと。回避を試みることのできる敵を出すと、戦闘シーンが長引きがちになるし、当然ながら高い【反応】値は攻撃の命中率が高いということでもある。敵の人数を決める際には、【反応】が8以上ある幹部は、実際より1つか2つ上のレベル(強化版幹部か小ボス)としてカウントするといいだろう。(入門用の無料ルールブック『イージー・モード』では遠隔攻撃や爆発物の回避に関するルールを使用しないので、【反応】の値については気にしないで大丈夫だ)
また、DGDのNPC本人を敵として登場させる場合は、キャラクターの解説にある特徴を何か1つは演出にもりこむようにしよう。例えば、ドロップ(DGD P.75)なら建物の屋上に潜んでPCを狙い撃つことだろう。GMは〈知覚〉に成功したプレイヤーに「おまえは隣のビルの屋上で、ネオソビエト製のアサルト・ライフルに付けられた狙撃用スコープのレンズが一瞬光を反射したのに気付いた」と言うとか。ラグエル(DGD P.76)なら文中にある台詞をそのまま言うとか。全NPCにイラストが用意されているので、それをプレイヤーに見せてやるだけで外見描写も完璧だ。
置き土産だけ出す:これまた『インシデント』でもボゾーズの置き土産の罠が出てくるが、キャンペーンの場合はそれをどう後につなげるかを考えるとよい。一番カンタンなのは罠を仕掛けた奴の名前をほのめかしたり、キャンペーンの次の回に非敵対的な立場で登場させたりすることだ。例えば、オプション・クリフハンガー『ボゾーズの罠』で出てきた罠について、他のNPCに「あれはバート(DGD P.24)とかいうクソピエロの仕掛けだろう。古い罠で酸が弱まっててラッキーだったな」と言わせる。PCたちがヴードゥー・ボーイズとの戦闘中に同様の罠があることに気付き、それをうまく利用して勝利したが、その罠はセントウィット(DGD P.20)の仕掛けたものであることが判明する、といった具合に。
別人として出す
別人として出す方法もある。つまりデータだけを使って背景情報は変えるのだ。
シナリオを自作する時に(計画的に)データを流用する場合も、セッションの途中でNPCを登場させる必要が出て(即興的に)データを流用する場合も、DGD巻末のNPCリストが役に立つ。
腐敗した企業警察と交渉する必要ができた? DGD P.168からの『キャラクター:組織別』表を見てNCPDの中から適当なレベルのキャラクターを引っ張ってきて根性の腐っている度合だけを上げよう。
PCが義憤に駆られて地元のブースターギャングを襲った。PCたちは戦闘のスペシャリストばかりなので、GMのおまえは戦闘をもっと歯ごたえのあるものにしたいと思っている? DGD P.170からの『キャラクター:レベル順』表を見て幹部を1人か2人追加で出そう。処理を軽くしたいなら幹部は全員同一データで出すといい――つまりたとえばリパー(DGD P.74)と同一のデータを持つテアラーとレンダーという名前のギャンガーを出すのだ。
危険な任務に赴くPCが、「リパードクをカネで雇ってクルマに待機させとこうぜ」と言っている? もちろんDGD P.172の『キャラクター:ロール別』表の出番だ。メイルストロームのリパードク(強化版雑魚)が一番安く雇えることだろう。もちろんそいつはデータはメイルストロームのリパードクだが実際はメイルストローム所属じゃない――たぶんな。
もちろん展開上必要な技能は好きに追加して構わない。
二代目中川忍とクラッシャー:なおDGDには英語圏で「シナリオやキャンペーンのボス役によくデータが流用される」キャラクターが2人いる。タイガー・クローズの二代目中川忍(シノブ・ザ・セカンド)(DGD P.122)とメイルストロームのクラッシャー(DGD P.68)だ。
二代目中川忍は、徹甲弾を発射できる攻撃回数2のショットガンで敵の装甲を削ってからSP10以下の防具を無視するモノカタナで斬りつけたり、柔道のかわし投げで回避不可能なカウンター攻撃をしかけてくる、トリッキーな戦い方をするキャラクターだ。ルールを熟知したGMならば、百戦錬磨のベテランPCたちも手を焼く強敵として登場させられるだろう。
一方クラッシャーはどう使っても問題ない、ストーリー的にも戦術的にも。ストーリー的には、ブースターギャングのボスにも、エグゼクが連れている凶悪なボディガードにも、汎用サイバーサイコにも使える。戦術的には遠近両用で、ショットガンもグレネードも使えば一撃必殺の空手もうなってとぶ(技能基本値16は本書最強クラスだ)。サイバーウェアにはハードンド・シールディングも入れてあるのでEMPにも強い。しかしてPCにとっては幸いなことにも装甲自体はSP12と「ものすごく厚いわけではない」。クルー全員がDGD P.150の『強化されたプレイヤー・キャラクター』の条件を満たしているベテランPCチームの相手のボス敵として過不足ない強さで、しかもややこしいルールは使わない、扱いやすいデータとなっている。
おまえが卓を囲むプレイヤーたちの好みに合わせて使い分けよう。
住民視点のナイトシティ・ガイドとして使おう
DGDはキャラクター・データ集だ――それはつまり、住人の視点から見たナイトシティのガイドブック、住人の視点からナイトシティのいろんな地域やいろんなギャングやいろんなものを見た本でもあるってことだ。
例えば、タイガー・クローズの章を読めば、カブキ地区がなんで“カブキ”と呼ばれるようになったのか、アラサカ撤退後のナイトシティで他の日系メガコープが何をしていたのか、日系人コミュニティがどのようにして復興していったのかを知ることができる。ゾーナーズの解説を読めば、南ナイトシティで以前からの住民と、市街再開発のために彼らを追い出したい企業および市当局の対立があることがわかる。サイトシーアズの章を読めば、とある事件の影響でNCPDとアルデカルドスが一触即発の状況にあることがわかる。
また、DGDのNPCたちの中には、『サイバーパンクRED』のルールブックや既刊のサプリで言及されている事件やキャラクターに関わりを持つ者たちもいる。フォーティやグリース、24/7といった、ルールブックで各ロールの解説に登場するアイコニック・キャラクターたち。『データパック&スクリーン・セット』収録のスクリームシート『デジタル・ディーヴァズ・バーン・イット・ダウン』に登場したデジタル・ディーヴァズ周辺の人々。そしてDGDのボゾーズの章では、スクリームシート『ヒラリア2045』の事件の意外な真相について知ることができる。
DGDのNPCたちは、今後発売になるサプリでも登場する。未訳のシナリオ集『Tales of the RED: Hope Reborn』や、英語版が近日発売予定となっているナイトシティのワールドガイド・サプリメント『The Edgerunner's Guide to Night City』では、DGDで解説されている組織やNPCにも言及がある。もちろん、シナリオ集もサプリもルールブックがあれば問題なくプレイできるが、ゲーム世界やNPCたちをより深く理解する副読本として役立ってくれるはずだ。
『サイバーパンク:エッジランナーズ・ミッション・キット』とあわせて使おう
最後に、DGDはエッジランナーズ・ミッション・キット(以下EMK)用にも役立つ。
2077年のナイトシティは2045年から大きく様変わりしているが、DGDで解説されるギャング組織の多くは存続している。もちろん、メンバーの中には死んだり引退した奴もいるだろう。だが、何らかの形でエッジに留まり続けている奴らもいるはずだ。サイバーパンクの世界では、金さえあれば100年以上現役のまま生き続けることだってできるんだからな。
タイガー・クローズのワカコはその好例だ。コンピュータゲーム『サイバーパンク2077』をプレイしたなら、ジグジグ・ストリートのフィクサーとして登場した彼女に出会っているだろう。DGDでは、2077でも触れられている彼女の最初の夫のことや、彼女がタイガー・クローズに関わることになった経緯が語られている。
公式設定で2077年に生存が確認されているのはワカコだけだが、おまえのナイトシティで他のキャラクターたちがどうしているかを決めるのはおまえだ。おまえのEMKのセッションでDGDの誰をどんなふうに登場させようが、おまえの自由だ――32年後の本人として、あるいは別人として。おまえの想像の翼を自由にはばたかせろ、チューマ!
(文:サイバーパンクRED翻訳チーム)